交渉を英語で進める実践的なステップ【ビジネス事例①解雇交渉編】

交渉スキル

みなさん、こんにちは。ACEです。

これまでの記事で、海外営業として向上すべきビジネススキルやビジネス交渉において重要な内容を中心に記事にしてきました。

今回は海外営業として実際に英語で交渉を進める事例をベースに、どのように交渉を進める事で、より有利な結果を導きやすいか?という内容に関して経験談踏まえ説明してみたいと思います。

みなさんの交渉力が上がる一つのきっかけになってもらえたら嬉しいです

交渉事例に関しては、海外営業マンとしてより大変な事例をテーマに説明するようにします。これまでに経験されたことがある方、これから経験される方、様々だと思いますが、実践的な内容を説明するようにしますので、皆さんの今後の仕事の参考になればと思います。

高難度の交渉は様々なビジネススキルを必要とします。このような交渉の経験を積み重ねる事で交渉力は確実に向上します。

今回のテーマは「現地従業員の解雇交渉」です。

現地従業員の解雇交渉と一言で言っても、様々なケースがあります。今回は、より難易度の高い事例として、「従業員側に落ち度は無いが、業績不振に伴う固定費削減のためにどうしてもリストラを進めなくてはいけない(会社都合によるリストラ)」という状況下という設定で説明します。

※従業員が問題を起こした時など、従業員側に問題がある場合は「理由が明確」であるので難易度はそこまで高くないです。そのような場合は、本人と結ばれている「雇用契約書」に基づいて粛々と進める事です。

※また国によっては、法的に「一方的にリストラ」を進める事が出来る国はもちろんありますし、そのような進め方が一般的な国であれば、そのように進める方が効率的です。今回はあくまで「解雇」が簡単では無い国を想定したケーススタディーです。

交渉を英語で進める 解雇交渉をうまく進めるステップ

どのような背景があるにせよ「会社都合での解雇交渉」というのは決して気の進む内容ではないですよね。それでも、状況によってはあなたが立場上その職務を全うしなくてはいけない場合も出てきます。

これまで私は自分より職位が高い方の解雇交渉から、自分の部下の解雇交渉まで様々な「解雇交渉」を行ってきました。もちろん全て現地の方ですので英語での交渉でした。

その経験の中から、解雇交渉をスムースに進めるステップ、心構えとして、以下の内容をアドバイスさせてもらいます。

  1. 普段からの関係性が極めて重要
  2. 事業縮小やオフィス規模縮小の可能性をかなり前(場合によっては数年前)から示唆
  3. 事前に各国の「解雇ルール」に関しては地元の弁護士に良く確認し、間違いのない進め方を理解し実行する
  4. リストラを進めざるを得ない背景(会社状況含め)を数字含めて丁寧に説明する
  5. 相手の思い、会社に言いたいこと等、リストラ対象者からの話は全て丁寧に聞く(言う事を聞き入れるという事では無く、単純に話を聞く)
  6. 相手の納得感を得られるまで何度でも協議を重ねる(結果を求めて急がない)

このようなステップ及び心構えで私はこれまで対応してきました。

お陰様でこれまでの解雇交渉は全て円満に決着しています。(従業員側に問題がある内容での解雇に関しては訴訟騒ぎ等の経験もあります。それはそれで良い経験となりました。)

それでは、少しずつ詳しく解説していきたいと思います。

常に先を見据えている事の重要性 試されるビジネススキル

先ずステップ・心構えの1、2の部分です。1 の「相手との関係性」に関しては、この5つのステップの中で最も重要な内容ですね。

リストラ対象となる相手と解雇交渉を進めるあなたの間にどれだけの「信頼関係」が構築されているか?という事は交渉において極めて重要な鍵となります。

信頼関係が深ければ深いほど、「解雇」というのは相手には伝えづらい内容ですが、信頼関係が深い事で、あなたの言葉はより相手に届く事になります。

逆に信頼関係が薄ければ、あなたの言葉は届かないどころか、「信頼していない相手」というフィルターが掛かってしまい、ただでさえ重たい内容が一層重たく嫌悪感の高いものとなってしまいます。

組織や人間関係というのは将来的に何が起きるか分かりません。だからこそ予測不可能な先をしっかりと見据えて、普段からしっかりと信頼関係を構築し、まわりにいる人たち皆を味方に出来るように行動力、人間力を高めておくことが重要です。

相手との信頼関係、行動力、人間力、本当に全て重要なビジネススキルです。全て個別の記事にしていますので、まだ読まれていない方は以下参考にしてみてください。
海外営業の仕事において最も重要な事【信頼関係】
ビジネススキルの向上③行動力 【海外営業として出世の分かれ目】】
ビジネススキルの向上⑦ ヒューマンスキル【人間力を高める!】

また自分の頭の中で、常に先を見据えたシナリオを描けていれば、将来的に(近い将来的に)リストラを進めざるを得ないというシナリオもワーストケースの一つとして描かれるはずです。

その選択肢があり得るとするならば、2 のステップのように「事業縮小の可能性」「オフィス縮小の可能性」を示唆する事で、リストラ対象者に気持ちの準備をさせる事も重要だと私は思います。

ここは人によっては意見が分かれるところかもしれませんね。
実際に私も、当時の上司からこんな風に言われました。

「事業縮小やオフィス縮小の可能性なんか示唆してしまったら、従業員が不安になって会社やめてしまうのではないか?あるいはやる気を失ってしまうのではないか?」

私はそれでも示唆すべきだと考え、示唆しましたし、その後結果的に円満なリストラへと導く事が出来ました。

私は先ず以下のように考えていますし、対処も事前にしています。

  • 絶対に辞めて欲しくない重要な従業員には事前に「事業縮小・オフィス縮小の可能性について皆の前で話をするが、あなたはどれだけ縮小したとしても残ってもらいたいと考えているので心配しないで欲しい」という話をします。
  • 「事業縮小やオフィス縮小の可能性」を示唆し、不安になって辞めるという選択肢を従業員が選んだとしたら、それはそれで問題ない。(目先は困るかもしれないが、将来的にはリストラ候補であるので)
  • 「事業縮小やオフィス縮小の可能性」を示唆すると共に、「自分はそのようには絶対にしたくないので、何が何でも皆で力を合わせて、皆の居場所をどんどん大きくしていこう」という話をします。ある従業員によっては不安が勝り、ある従業員によっては逆に士気が向上します。ここで士気が下がり、不安にかられ、やる気を失ってしまう従業員がその後のリストラ候補筆頭となる。

以上のように、常に先を見据えながら、考え、対処する事が重要になってきます。こちらも過去記事 シナリオ構築力の重要性 に関してもご参照ください。
ビジネススキルの向上②シナリオ構築力 【英語で交渉するために】

また、このように進められるのもやはり、前提として「相手との信頼関係」が構築されているからです。

そのうえで3、4、5、6 のステップへと入っていきます。

ステップ3として、地元弁護士への「法的なルール」に関して、必ず事前に確認を取っておきましょう。国よってルールは異なりますので、ここで詳細内容は割愛させて頂きます。

このステップは必ず忘れずに実行しましょう。弁護士さんへの相談はお金が掛かりますが、ルール通りに進めないことにより会社側が一気に不利になる事も多々ありますので、注意が必要です!

急がず丁寧に ここでも試されるビジネススキル

解雇交渉のケースとして、あまり関係値のない相手と解雇交渉を進めるケースも場合によってはあり得ます。私が「自分より職位の高い方」の解雇交渉を担当した時がまさにこのようなケースでした。

以降、特に4、5、6 のステップはリストラ対象者との信頼関係があればよりスムーズな協議を進める事が出来ますが、仮に信頼関係がなかったとしても実践をアドバイス出来る一般的な内容ですので、是非参考にしてみてください。

4、5、6 のステップは、一言で言えば「丁寧に説明し、丁寧に話を聞き、丁寧に協議を続ける」という非常にベーシックな内容です。

4 においては「具体的な数字」をしっかり示したうえで、会社の状況がどれだけ苦しい状況にあるか?を感覚的にではなく、具体的に視覚的に相手に理解してもらう事が重要です。

それでも、リストラ対象者本人にしてみれば、「だからってなぜ自分が?」「なぜ他の人間ではないのか?」という消化しきれない思いが必ずあります。

だからこそ、相手の話を丁寧に聞く事が重要です。吐き出したい思いを全て吐き出してもらうぐらい話を聞く事が重要です。

そうはいっても、いきなり「解雇告知」を受けて頭が整理出来ていない状態では全ての思いの丈は当人からも出てこないはずです。そんな時は、相手にしっかりと頭を冷やし、頭を整理してもらう「時間」を与える事も重要です。これは週末を挟んだ翌週とすると良いでしょう。

リストラ対象者は週末の間に色々と考えるはずです。身近な人と話もするでしょうし、場合によっては弁護士にアドバイスを求めに行く人もいるでしょう。それでもちゃんと適切な時間を与えて、あらためて話をする時にも、とにかく「相手の思いを聞く」ことです。

「相手の話を聞く = 相手の要望を受け入れる」という事ではありません。あくまでも相手の思いの丈を受け止めるということです。

そのうえで6です。そうは言っても、会社の状況からすればリストラを回避する事は出来ないわけです。この6のステップで私が必ず話をする内容は、

  • 今回の退職が相手(リストラ対象者)にとっても「良い機会」であると理解してもらう。
    →会社業績が苦しい中で、「いつ仕事がなくなるのか?」と不安の中で働くよりも、より安定した環境を自ら探す機会として欲しい旨の説明。
  • 希望退職金(退職補償金)が出る場合は、「今ならこの退職金が出るが、今後業績が更に悪化するとこの退職金すら出なくなる」と説明。→場合によっては希望退職金が出せないケースもあると思います。ただ、ここは解雇交渉を担当しているあなたが、自社(日本本社含む)の経営層に、その必要性をしっかりと説明し、希望退職金を会社としてしっかり出せる環境をつくることが重要です。

    ※多くの国においては「補償金」が必要なケースが多いと思います。

  • このままいくと会社自体がなくなり、全員が何も得ずに仕事を失うリスクがある事を説明。「全員が仕事を失うのではなく、あなたは補償金を受け取り、そのうえで他の従業員を助ける事にもなっている」という事を理解してもらう。

以上のような会話を丁寧に続ける事です。決して結果を急いで求めにいってはいけません。

会社あるあるだと思いますが、特に本社の役員等、役職の高い方ほど、せっかちで「直ぐに結果を求めたがる」特徴があります。但し、このようなケースで大事な事はスピードではなく、「可能な限りの円満退職という結果」です。時間を掛けて丁寧に結果を求めることです。

この 4、5、6 のステップで問われるあなたのビジネススキルは、やはり「コミュニケーション力」であり、この複雑なコミュニケーションを成立させる「英語力」です。

こちらも是非ご参照ください。
ビジネススキルの向上① 英語力【海外でのビジネス、必要です!】
ビジネススキルの向上⑤ コミュニケーション力【交渉力の向上】

以上、今回の投稿は少し長くなってしまいましたが、少しでも参考になればと思います。文中に有りますように、このような高難度の交渉は様々なビジネススキルを必要とします。だからこそ、このような交渉の経験を積み重ねる事で交渉力は確実に向上していきます。

このブログからいずれかのビジネススキルが向上する事に繋がれば本当に嬉しいですね。

投稿者プロフィール

名前 ACE

40代現役サラリーマン

海外営業歴20年以上。海外在住25年以上。海外で前線を飛び回りながら海外拠点の責任者まで幅広く活動。商談、交渉回数は通算3000件以上。子育て奮闘中。

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